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院長ブログ

生物学的年齢が測れたら

 生まれてからの時間の長さが暦年齢です。これに対して、身体の機能や病気へのリスクを反映させた年齢が生物学的年齢と言われています。「歳よりも若く見える」のは生物学的年齢が暦年齢よりも若い例でしょう。身体の測定値で、年齢別平均値の情報が蓄積されている臓器・器官については測定値が何歳の平均値に相当するかを当てはめて、「〇〇年齢」と称されることもあります。

現在、身体全体の生物学的年齢を測る方法は確立されていませんが、先日東京で開催された第23回日本抗加齢医学会のシンポジウムでも活発に議論されていました。DNAのメチル化などによる遺伝子修飾(エピジェネティッククロック)、テロメアやGテールの長さなどが取り上げられていました。加齢に伴う他の因子との関連をどのように考えるか、その他にも課題が多い領域ですが今後の進展が注目されます。

 もし、良い測定方法が開発されて、生物学的年齢が測定できたらどのように使われるでしょうか?臨床検査は、測定をするだけではなく、得られた結果を活用できてこそ良いものと言えます。良い測定方法であれば、暦年齢よりも生物学的年齢が大きい時に、暦年齢に近づけるような対策が提示できることが求められます。その対策には暦年齢よりも生物学的年齢が小さい場合の要因が参考になるでしょう。

 臨床検査の測定値には基準値と臨床判断値があります。基準値(基準範囲)とは「健常者」の95%が含まれる範囲です。LDL-コレステロールであれば65~163mg/dL(検査機関による)です。一方、臨床判断値とは予防医学的な根拠に基づく目安であり、診断の基準や疾病管理の目標としても使われます。これらには学会や公の研究グループによる検討結果が反映されています。LDL-コレステロールの一般的な臨床判断値は140mg/dLですが、動脈硬化の他のリスクを勘案して変動します。

 将来生物学的年齢が測定できるようになったら、基準値と臨床判断値はどのように決められるでしょうか?暦年齢が基準値であり臨床判断値にもなるか、異なる場合はどのような考えに基づくか。これからの検査ですが、結果の利用の仕方から考えてみるのもよいかもしれません。