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院長ブログ

ビタミンDのDは?

 ビタミンDのDはおそらく、ビタミンA、B、Cの次に命名されたことに由来するのだと思いますが、不足や欠乏を意味するdeficiencyのDかと思うほど足らない人が多いビタミンです。ビタミンDは身体の中でも紫外線の力を借りて作ることができるため、厳密にいうと「ビタミン」らしくないのですが、栄養として取らなければ不足するものなので、やはり「ビタミン」です。カルシウムの吸収やその後の利用に必要なビタミンとして発見されましたが、これまでの研究でほとんどすべての臓器に作用することが知られ、特に免疫との関連も注目されています。

 ビタミンDの充足状態は血液検査で血中の25水酸化ビタミンD濃度を測定して評価します。これが30ng/mL以上で充足、20~30ng/mLが不足、20ng/mL未満が欠乏と判定されます。この値は動物(ヒトも含めて)由来のビタミンD3と植物由来のビタミンD2を合わせたものです。以前からビタミンDが不足している人が多いことは指摘され、健康院クリニックで集計した際も不足と欠乏を合わせると80%にも達していました。

さらに、6月7日に新聞報道された調査結果によると、成人の98%が不足していたとのことです(東京慈恵医大などのチームによる東京都内約5500人の調査)。なお、今回報道された調査ではビタミンD3とD2を分けて測定し、検出されたビタミンDのほとんどがD3であったとのことです。

 ビタミンD3は日光を「ほどよく」浴びて自分で作ることに加えて、魚(サケやサンマ、イワシなど)などの食品から摂ることができます。ビタミンD2はシイタケ(特に天日干しシイタケ)などから摂ることができます。一方、血中25水酸化ビタミンDを30ng/mL以上にするにはサプリメントを利用しないと難しい場合が多いのが現状です。最近はビタミンDを強化した乳製品も発売されています。

 ビタミンDは肝臓で第一段階の活性化とも言える「25の位置」の水酸化が行われます(血液検査ではこの状態のものを測定します)。その後、活性化の第2段階である「1αの位置」の水酸化が主に腎臓で起きて初めて作用する形になります。第2の活性化にはいろいろな制御がかかっているので摂取したビタミンDがむやみに活性化されないよう、「関門」にはなっていますが、過剰摂取は血液中のカルシウム濃度上昇につながるため要注意です。なお、骨粗鬆症の治療薬として使われるビタミンD製剤はなんらかの活性化(構造の変化)がされているものであり、通常の血中ビタミンD測定では測ることはできません。

 ビタミンDのDが欠乏・不足のDでなくなるよう、幅広く有効な啓発が必要です。サケ、サンマ、イワシはEPAやDHAといった良い脂肪酸を多く含む食材として紹介されることが多いですが、ビタミンDも豊富であることも伝わるとよいですね。ビタミンDに必要な日光は日焼けするほどではなく、散乱光(直射日光ではなく)30分程度とされています。それ以上だと効果は頭打ちになるかもしれません。