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院長ブログ

二酸化炭素とアンモニア

 二酸化炭素(CO2)は地球温暖化の観点から、アンモニア(NH3)はCO2削減の方策の観点から注目されていますが、

ここでは地球環境ではなく体内環境での二酸化炭素とアンモニアです。

 前回のブログで医療の現場でよく使われる略称としてALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)を取り上げました。

ALTはアミノ酸のアラニンがエネルギー源(ピルビン酸)に変化するときに取り出されるアミノ基がアンモニア(NH3)として遊離しないように他の化合物(αケトグルタル酸)に移します。

これは処理しなければならないもの(アンモニア)をそもそも作らないようにする仕組みとも言えます。

一方、体内では別のところでアンモニアが常に発生しています。体内のアンモニアは大きく腸管から入ってくるアンモニアと代謝の中でやり取りされるアンモニアの2群に分けて考えてもよいでしょう。今回は前者についてです。

 腸の中で細菌がアミノ酸を分解する時にアンモニアが発生します。ピロリ菌がいれば尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。消化管で発生するアンモニアは門脈を通って肝臓に運ばれます。

肝臓ではこのアンモニアをどのように処理するのでしょうか。そこで登場するのが二酸化炭素です。

人間は炭水化物からエネルギーを得ますが、その際に発生する二酸化炭素は呼吸によって肺から排出されます(1人1年間に約320kg)。実は二酸化炭素はそのまま排出されるだけではなく、肝臓でアンモニアの処理に使われているのです。

肝臓のミトコンドリアでエネルギー産生に伴って発生した二酸化炭素はアンモニアと反応して、カルバモイルリン酸になります。

カルバモイルリン酸は尿素サイクルというシステムに入り、結果的に尿素が作られます。

このようにしてアンモニアの窒素は尿素の窒素となり、血中を経て腎臓から尿に排出されます。

血中の尿素の窒素を測定する血液検査の項目が尿素窒素(blood urea nitrogen、BUN)であり、これは腎機能関連の検査として使われています。

 消化管から流入してくるアンモニアを炭水化物が体内で「燃焼」して産生される二酸化炭素を使って処理する。なんとも効率的なシステムです。

 もう一群のアンモニア、代謝の中でやり取りされるアンモニアについては別の機会に。キーワードはグルタミン酸、ヘモグロビン、細胞寿命の予定です。