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院長ブログ

ブドウ糖と果糖

 天然の糖質は単糖として200種ほどあり、そのうちヒトの体内には約30種類が存在するとされています。一方、血液中の糖の濃度、つまり血糖値はほとんどブドウ糖の濃度といってもよいほどです。糖の中ではブドウ糖が主役であり、エネルギー代謝の要です。

 ブドウ糖は英語ではglucoseですからグルコースとも呼ばれます。glucoseはギリシャ語で「甘い」を意味するglucusに由来するそうです。一方、ブドウ糖の語源には諸説あるようですが、ブドウから発見された糖と考えておいてよいでしょう。果糖は果物に多く含まれる糖であり、英語ではラテン語の果物fructusにoseをつけた形のfructose・フルクトースです。

ブドウ糖と果糖がつながったのが二糖類の一つであるショ糖です。ショ糖はいわゆるお砂糖(白糖)で、サトウキビやサトウダイコンから取られます。ショ糖の英語名であるsucrose・スクロースの元をたどるとサンスクリット語でサトウキビを意味するSarkara(サルカラ)に達します。身近な糖の語源はギリシャ語、ラテン語、サンスクリット語とさまざまです。

 さて、ショ糖はブドウ糖と果糖が1対1でつながってできていますが、血液中の糖はほとんどがブドウ糖であり、果糖の血中濃度はブドウ糖の500分の1にも届きません。これは果糖が肝臓で代謝されるからです。

食物として摂取されたショ糖は腸管内でスクラーゼという酵素によってブドウ糖と果糖に分解され、門脈を通って肝臓に入ります。ここで果糖は2段階の酵素反応を経て、もとの6つの炭素からなる構造が3つの炭素からなる構造に分解されてエネルギーを産生するシステム(解糖系)に入っていきます。つまり、肝臓に達した果糖は分解されてなくなります。一方、分解産物の一部はタンパク質の糖化につながる物質に変化するため、果糖の摂りすぎに注意が促されることがあります。

 ブドウ糖と果糖の関係にはもう一つ。ブドウ糖が多くなるとソルビトールを経て果糖に変化する経路が活発化します。この経路でソルビトールが過剰に産生されることが糖尿病での末梢神経障害の原因にもなると考えられています。また、果糖はブドウ糖よりもタンパク質を糖化させる効率が数倍高いと言われています。タンパク質などが糖化されて産生されるAGEs(advanced glycation end products、終末糖化産物)は加齢に伴う変化やさまざまな病気との関連が注目されています。