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院長ブログ

身体の中の連携

 身体の中では、ホルモンを分泌する内分泌器官とホルモン標的臓器との連携以外にも、骨と脂肪組織、筋肉と脂肪、腸内細菌と脳などさまざまな連携があります。5月2日のブログで触れた、骨髄で赤血球が造られることと肝臓でのアンモニア処理システムとの関連も一つの連携と言えるでしょう。

もし骨髄内でアンモニアが処理されるのならわざわざ肝臓でまで運搬しなくても、とも思いますが肝臓以上に効率よくアンモニアを処理できるところはありません。そもそも胎生期初期の主な造血の場は肝臓です。発生が進むなかで造血組織は骨の中、つまり骨髄に移動します。離れた臓器間の連携に見えても、もともとは近くの細胞同士の連携とも言えます。

 造血との連携で忘れてならない臓器が腎臓です。骨髄で赤血球ができるためには腎臓からのサポートが欠かせません。そのサポートがエリスロポエチンです。造血幹細胞から赤血球系の前駆細胞ができ、さらに赤血球へと成熟するためにはエリスロポエチンというホルモンが必要です。このホルモンはほとんどが腎臓で作られます。人工透析が必要になるほどの腎不全が進行するとエリスロポエチンが欠乏し、いわゆる腎性貧血になります。一方、エリスロポエチンは発生の初期には腎臓ではなく主に肝臓で作られている時期があります。この時期には肝臓が造血の場であったのですから、造血の場のすぐ近くでエリスロポエチンが産生されていたことになります。こちらも、もともとは近くにあった細胞同士の連携が離れた臓器間の連携につながった例です。

なお、最近エリスロポエチンは胎生期に肝臓で作られる前に卵黄嚢という場所で作られていることが報告されています。