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院長ブログ

ビタミンなのにビタミンでないもの?

 「なぞなぞ」のようなタイトルですが、このテーマも糖質に関連します。

 ビタミンとは「体内で作られないか、作られてもごく微量」で、「身体の中で起こる様々な化学反応を助け」、「無いと生命活動が維持できない」ものです(ビタミンの英語のつづりであるvitaminに昔は「e」がついていたことは3月20日のブログで触れました)。

 ビタミンのなかでもビタミンCは最も有名なものと言ってよいと思いますが、化学名はアスコルビン酸です。アスコルビン酸はヒトにとっては「ビタミン」であっても動物によっては「ビタミン」の定義が当てはまらない場合があるのです。ヒトをはじめとする霊長類やモルモット、魚(硬骨魚)ではアスコルビン酸を体内で作ることはできません。金魚の餌には必ずビタミンCが入っています。

他の多くの動物、すなわち、犬、猫、マウス、鳥などは自分の身体の中でアスコルビン酸を作ることができます。つまり、これらの動物においてアスコルビン酸は「ビタミン」ではありません。ちなみに、アスコルビン酸=ascorbic acidの語源は「a+scorbic」、つまり壊血病を防ぐことであり、生命活動に欠かせないことが名称に込められています。

 さて、アスコルビン酸と糖質との関連です。実はアスコルビン酸の原料はブドウ糖です。アスコルビン酸を体内で作ることができる動物にはブドウ糖からアスコルビン酸を作る経路の酵素がそろっています。一方、ヒトをはじめとするアスコルビン酸を作れない動物はこの経路のうちの大事な酵素(グロノラクトンオキシダーゼ)を持っていません。この酵素を持っていない動物にとってはアスコルビン酸は「ビタミン」であって、食物から摂取する必要があります。

 ヒトは進化の過程でアスコルビン酸を作れなくなったとされていますが、それは100万年前のできごとだったそうです。アスコルビン酸を自分で作らないほうが生存に有利なのか、自分で作るよりも食物から摂ったほうが効率がいいからなのか、偶然の結果なのか、想像が巡ります。

 なお、ビタミンCは水に良くとける水溶性のビタミンですが、水溶液の色は黄色ではなく、無色透明です。