新着情報

院長ブログ

脳と筋肉の関係

 脳からの指令で筋肉が動きますが、筋肉の活動、つまり運動が脳に影響を与えることが注目されています。

 筋肉はその活動のためにエネルギーを消費するだけではなく、さまざまな物質を産生・分泌しています。それらの物質はマイオカインと総称されています。そのマイオカインの一つであるIGF-1という物質が脳に届いて脳細胞を保護するようです。IGF-1はソマトメジンCとも呼ばれる蛋白質であり、健康院クリニックの予防医療健診では血液検査の項目に加えられています。この検査を導入している理由は血中のIGF-1が加齢とともに減少することや、日頃の運動量を反映していると思われているからです。運動によって脳下垂体からの成長ホルモン(GH)分泌が増え、このGHが肝臓に働くとそこでIGF-1が産生されます。運動によって筋肉からもIGF-1が出てくるということは血中のIGF-1は肝臓由来と筋肉由来のものの合計です。いずれにしても血中のIGF-1を運動習慣の指標としてとらえ、生活習慣に関するアドバイスに活用していこうと思います。

 さて、運動によって産生されたIGF-1は脳に届いてBDNF(脳由来神経栄養因子、brain-derived neurotrophic factor)の発現を増強することが報告されています。BDNFの発現増強は脳のさまざまな領域や脊髄で起きるようです。BDNFは脳細胞を保護するように働きますが、とくに短期記憶の中枢である海馬においては神経の新生(!)を促します。脳の細胞は一度できあがった後は減少するのみで、新しくできることはないと「昔」は思われていましたが、海馬は例外のようです。海馬では新しいニューロン(神経の単位)が古いものに随時置き換わっています。新しい情報は海馬の短期記憶装置に一時保管された後に大脳の長期記憶装置に移されます。短期記憶装置が書き換えられる時に古い記憶に対応するニューロンが削除され、新しいニューロンが新生されるそうです。そして運動によって産生されるBDGFが新しい記憶装置を確保するのに役立っている可能性があります。運動によって海馬ニューロンの新生が促されるのであれば心強いことです。運動の脳保護作用はBDGF以外の物質や血流の増加なども関係しているでしょう。認知症予防にどのような運動をどのくらいするとよいのか、今後の研究成果が待たれます。