新着情報

院長ブログ

見える時計と見えない時計

 このブログは本年3月にスタートし、今回で31回目となりました。読み返してみるとそれぞれのブログを作成した時のことを思い出し、それからの時間の長短を感じます。

 時間と言えば時計ですが、私のデスクからは時計がいくつか見えます。壁時計1つ、置時計2つ、腕時計1つ、砂時計1つ、パソコンの中の時計3つ、携帯電話の時計2つ。このような「見える」時計のほかにも「見えない」時計があります。その一つが体内時計です。1997年に時計遺伝子が発見され、2017年には体内時計研究に対してノーベル医学・生理学賞が授与されています。時計遺伝子の働き方は振り子時計になぞらえることができます。振り子が右に振れるように働く蛋白質と左に振れるように働く蛋白質があり、お互いにその量を調整することによってリズムができるそうです。時間医学や時間栄養学という分野ができているほど体内時計の研究は進んでいます。

 体内時計には親時計(中枢時計)と子時計(末梢時計)があります。親時計は脳内の視床上核にあり、子時計はあらゆる組織や細胞に存在しています。親時計からの情報は自律神経、ホルモン、食事・運動などの行動を介して子時計に伝わります。また、食事は直接的にも子時計に作用します。特に朝食は肝臓の時計遺伝子をリセットすることが報告されています。

 親時計のスイッチを入れるのは網膜への光です。朝日が網膜にあたるとその13-14時間後の就寝時にメラトニンというホルモンが作られることにつながります。このホルモンが良い睡眠に欠かせません。就寝前にパソコンやスマホ画面からのブルーライトを受けるとメラトニンの産生が抑えられるため要注意です。

 からだの日内リズムは概日リズム=サーカディアンリズム(circadian rhythm)と言われます。概日とは「おおよそ」一日という意味です。地球の自転は24時間ですが、身体の1日はそれよりも少し長く25時間くらいだそうです。このずれや季節による昼夜の長さの違いを補正するためにも朝の光に加えて朝食が大切です。