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アト秒、CT、MRI、DWIBS
今年のノーベル物理学賞はアト秒という非常に短い時間を計る方法を編み出した研究者らが受賞しました。1アト秒とは10のマイナス18乗(小数点以下に0が17!)秒のことです。光の速度は秒速30万kmですから、1アト秒で光が進む距離は3オングストロームです(1オングストロームは10のマイナス10乗メートル)。これは電子の幅を見ている世界の長さです。なんとも短い時間ですが、宇宙の始まりのビックバンのさらに前の段階であるインフレーションは宇宙誕生の10のマイナス36乗秒後からマイナス34乗秒後に起こったとされていますから1アト秒のさらに短い時間のできごとです。とは言うもののアト秒のイメージを持つのはなかなか難しいことです。一方、アト秒を計ることには物理学のみならず未来の医学への展望もあるそうです。現在の医療に欠かせないCTやMRIがノーベル賞の対象だったように、アト秒物理学の発展も何らかの形で身近なものにつながるのでしょう。
CTはComputed Tomographyの略であり、コンピュータを使ったX線断層撮影です。その臨床用機器が初めて使われたのは1972年で、脳腫瘍が疑われた女性の検査が行われました。CTに対してノーベル医学生理学賞が授与されたのは1979年です。その後、精度や速度の向上、X線被爆量の低下などさまざまな発展があり現在に至っています。機器のみならず解析ソフトの進歩も目覚ましく、2次元の画像(断面図)を3次元の画像に構築するシステムも活用されています。その例が造影CTによる血管撮影や健康院クリニックでも行っている胃・大腸のCT(仮想内視鏡)です。
MRIはMagnetic Resonance Imagingの略で、磁気共鳴イメージングです。「核磁気共鳴」の原理自体には1952年にノーベル物理学賞が授与されていましたが、それを応用して画像イメージを作る方法に対しては2003年にノーベル医学生理学賞が授与されています。今から20年前のことですから以外と最近のことです。MRIは磁気を使うものであり、放射性物質やX線による被爆がないことが特徴です。また撮影条件を使い分けることによって臓器の構造のみならず「物性」の違いも区別することができます。撮影時間が30分ほどかかること、撮影部位に「覆い」をかけること、大きな音が出る機器が多いことなどが苦手の方もいらっしゃいますが、事前の説明や検査中の「声かけ」などで対処しています。脳のMRI検査では脳や血管の状態が詳しくわかり、「脳ドック」の中心的な検査です。MRCP(MRIを用いた胆管・膵管撮影)では、肝臓、膵臓、腎臓のみならず、胆管と膵管まで立体的に撮影することが可能です。また、全身のがんスクリーニング検査としてDWIBS(diffusion-weighted whole body imaging with background body signaling)という撮影方法があります。この方法は2004年に発表された日本発のものです。T2解析という方法や他の画像診断と組み合わせるとさらに有用です。