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院長ブログ

肥満・肥満症・メタボリックシンドローム その②

 メタボの略称でも知られるメタボリックシンドロームは心血管病(心筋梗塞や脳梗塞・脳出血など)のリスクが高くなる状態です。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積があることを前提として、①脂質異常(中性脂肪高値かつ/またはHDL-コレステロール低値)、②血圧高値、③高血糖のうち2つ以上もっている場合のことを指します。このように、メタボリックシンドロームの定義には肥満の有無は入っていません。メタボリックシンドロームの人の中には肥満の方と肥満ではない方の両方がいるわけです。一方、肥満症の方にはメタボリックシンドロームに該当する方と該当しない方がいます。メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積を柱とした概念です。ただし、海外のメタボリックシンドロームには内臓蓄積の蓄積が必須ではない場合もあることは注目点かと思います。

 内臓脂肪は腹腔内の脂肪であり、腹腔臓器の間を埋めています。内臓脂肪は腸間膜や大網に付着している脂肪組織です。内臓脂肪の過剰蓄積はCTで測定した内臓脂肪面積が100㎝2以上であることで判定されますが、すべての診療や健診の場で内臓脂肪面積を測定することは不可能ですので、ウェスト周囲長が代わりに用いられています。男性は85㎝以上、女性は90㎝以上が内臓脂肪面積100㎝2以上に相当し、内臓脂肪蓄積とみなされます。皮下脂肪と内臓脂肪では蓄積される脂肪そのものは同じですが、脂肪組織としての代謝・機能が異なります。まず内臓脂肪は皮下脂肪に比べて脂肪の合成・分解活性が高いと言われています。また、内臓脂肪からの血流は門脈を通じて肝臓に直行するため、過剰な内臓脂肪が分解されて生じる遊離脂肪酸やグリセロールが肝臓に流入し、脂質異常症や糖代謝異常をきたしやすいと考えられています。また、内臓脂肪蓄積は炎症を起こすサイトカインを増加させたり、血管を守るホルモンとも言えるアディポネクチンを低下させたりすることにより、動脈硬化を進行させます。

 我が国では2009年から特定健診、いわゆるメタボ健診が行われています。この健診事業の有効性についてはさまざまな検討がなされ、見直しの必要性を指摘する研究結果もあります。長期的な有効性についての評価もされていくでしょう。

 メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積に心血管病のリスクを高める他の病態が加わった状態です。一方、肥満症の診断をする際に考慮される内臓脂肪蓄積以外の11の要件には心血管病のリスクを直接高めないものも入っています。肥満症はメタボリックシンドロームの一部を含むより広い概念であると言えます。