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院長ブログ

ビタミンD不足を知る方法

 ビタミンD不足の方が大変多いことは以前のブログでも触れましたが、日照時間が短く、太陽の高さが低い冬季にはさらに不足になりがちです。では、自分がビタミン不足なのか否か、どのようにしたら知ることができるでしょうか。本年2月に論文が発表され、6月に新聞報道された調査結果(東京慈恵医大などのチームによる東京都内約5500人の調査)が成人の98%がビタミンD不足であったことからしますと、誰もが不足していると思ったほうがよいのかもしれません。

 日光によく当たっているか、ビタミンDを豊富に含む青魚などの食品をしっかり摂取しているか、サプリメントとしてビタミンDを摂っているか、などを盛り込んだ質問票によってある程度はビタミンDの充足状態を把握することは可能でしょうが、広く実用化された質問票はありません。やはり、採血をして血液中の25水酸化ビタミンD濃度を測定することが理想ではあります。ただし栄養状態の把握を目的として25水酸化ビタミンDを測定することは保険適用ではなく自由診療での採血・測定となります。血中の25水酸化ビタミンD濃度が30ng/mL以上で充足、20~30ng/mLが不足、20ng/mL未満が欠乏と判定されます。この基準を当てはめると上記のように多くの人が不足または欠乏と判定されたわけです。一般住民のほとんどが充足=正常と判定されない基準値は厳しすぎるのでは、と思うほどですがその妥当性を裏付ける報告は骨代謝の領域以外からも多くのものがあります。その例が、血中の25水酸化ビタミンD濃度が30ng/mL未満の人はそれ以上の人に比べてCOVID-19感染による重症化率や死亡率が高かったという報告です。

 ビタミンの中には、その発見の端緒が欠乏症による病的な状態であるものがいくつかあります。例えばビタミンB1は脚気が、ビタミンCは壊血病が背景にあります。そしてビタミンD欠乏は骨の異常、つまりクル病や骨軟化症と関連しています。食事摂取基準でのビタミンDの推奨目安量はこれらの骨異常をもたらさないレベルで設定されていましたが、フレイル対策の面からも最近見直しがなされ、18歳以上では男女とも1日8.5μgになっています。一方、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」でのビタミンD摂取推奨量は20μg以上であり、まだ差があります。サプリメントとして市販されているビタミンDは1錠に30μg含むものが多いようです。ただし、サプリメント摂取後の血中濃度上昇には個人差があり、1錠では足らない方もいらっしゃいます。

 ビタミンDは2段階の「活性化=水酸化」を経て働きます。このうちの1α水酸化はいろいろな仕組みで制御されているため、「安全弁」があるとも言えますが、過剰な摂取は避けましょう。