新着情報

院長ブログ

もの忘れと腸内細菌叢

 現在健康院クリニックで採用している腸内細菌叢検査(次世代シーケンサーによる)の結果は腸内細菌の多様性の程度、健康長寿に有用な物質(酢酸や酪酸)を産生する菌の割合、エクオール産生菌の有無、疾患のリスク(機能性下痢、高血圧、糖尿病、大腸がんなど)の点からまとめられています。この中で疾患のリスクとの関連はそれぞれの疾患を持つ人の腸内細菌叢に似たパターンかどうかで判定されています。もちろん腸内細菌叢だけで病気の成り立ちが説明できるわけではありませんが、生活習慣見直しのきっかけや目標になります。また、プロバイオティックス(乳酸菌やビフィズス菌などの補充)やプレバイオティックス(細菌の”えさ”の補充)などのサプリメントを選択するのにも参考になります。

 腸内細菌叢との関連で注目されている疾患の一つに認知症があります。国立長寿医療研究センターの佐治先生らは5年ほど前に腸内細菌叢のあるタイプをもっている人とその他のタイプの人では認知症の割合が大きく異なることを発表されました。その後、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)に腸内細菌叢が関連することも見出されました。さらに腸内細菌が産生する代謝産物と認知機能とに強い関連があることもわかったそうです。腸内環境の情報は細菌叢のみならず“メタボローム”の面からも解析が進められています。

 腸内細菌叢の改善は一つ一つの疾患を予防するだけではなく、全身の健康作りに役立つことが期待されます。腸内細菌叢の検査とその役立て方はまだまだ発展途上にありますが、自分と”共生する仲間”の様子を知ることの意味は大きいでしょう。