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握力は腕力?
歩幅とケイデンスで決定される歩行速度は運動機能の指標ですが、筋力の代表的な指標が握力です。握力は全身の筋力の指標となるため、フレイルの評価項目としても採用されています。その場合の基準値は男性28kg未満、女性18kg未満です。この値は日常生活に支障が出てくるレベルの握力低下に関する研究をもとに得られたものです。成長期を含めた加齢に伴う握力の変化から見ると、これらの基準値は男性では12~13歳の平均値ほど、女性では10~11歳の平均値ほどのレベルに相当します。握力の平均値のピークは男性で35~39歳の約47kg、女性では40~44歳の約29kgでありその後低下します。握力はその時の全身の筋力と相関するのみならず、全身の筋力アップがなされた時の目安にもなります。
通常の握力計で測定する握力は握る力のうちでもクラッシュ力という掌全体で握る力の最大値です。握る力の種類にはクラッシュ力以外にも指先だけの握る力の最大値であるピンチ力と握り続ける力であるホールド力があります。
歩行するために多くの筋肉が働くように、握力にもさまざまな筋肉が関わります。それらは大きく2つのグループに分けられます。手から手首を越えて腕に続く前腕の屈筋群(浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋)と手の中にとどまり手首を越えない手内在筋(虫様筋、掌側骨間筋、母指球筋)です。握る力のうち、クラッシュ力には主に前腕の屈筋群が関わりますから、握力は腕力の一部とも言えるでしょう。一方、ピンチ力には主に手内在筋が関連します。
「腕」はうでと読みますが、うでは「て」の「うえ」からできた言葉だそうです。また、古来の呼び方としては「うで」は手首から肘まで、つまり前腕のことであり、ひじから肩の部分、つまり上腕は「かいな」と呼ばれていたそうです。ただし、「かいな」を漢字で書くと「腕」となるのでややこしいところがあります。大相撲の実況で「かいなをかえしました!」と聞くことがあります。この場合の「かいな」は腕全体なのか、前腕なのか、次の場所で注目してみたいと思います。