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院長ブログ

30と30

 数字が健康作りの啓発に時々活用されますが、今回の話題は30と30です。30のうちの一つは「8030」の「30」、もう一つが「奈良宣言2023」の「30」です。

 80歳で永久歯を20本持つことを目標とする口腔衛生の啓発活動である「8020運動」はお聞きになった方も多いかと思いますが、8030はまだ聞きなれないかもしれません。これは日本耳鼻咽喉科学会が取り組む「きこえ8030キャンペーン」の8030で、80歳で30デシベルの音が聞こえることを目標とする活動です。30デシベルの音はささやき声程度の大きさです。以前のブログでも触れましたように聴力低下は単なるコミュニケーションの障害であるだけではなく、認知症の危険性を増すことが知られています。8030のためには若いころからヘッドホンやイヤホンで大きな音を長時間聞かないことがまず大切です。また自分の聴力を定期的な検査で把握し、低下している場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。

 もう一つは日本肝臓学会が2023年に発表した「奈良宣言2023」での「30」です。「ALTが30を超えている場合はかかりつけ医を受診しましょう。」というのが奈良宣言2023です。血液検査で測定されるALTはアラニンアミノトランスアミナーゼの略あり、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)と同様、トランスアミナーゼという種類の酵素です。主に肝臓で働いており、肝臓になんらかのダメージがあると肝細胞から漏れ出て血液中で増加します。ALTが30を超えることを目安にして肝疾患の早期発見・早期治療につなげることが奈良宣言2023の目的です。その背景には、ウィルス性肝疾患が年々減少している一方で脂肪肝など生活習慣が関連する肝疾患の増加があります。健康成人の15%はALTが30を超えていることもあり、「30」という目安は少し厳しいのではという印象はありますが、様々な検討の結果この数値が採用されています。健診などでALTが30を超えている場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

 40-40達成のニュースからあっという間に44-46に。大リーグで活躍中の大谷翔平選手が作ったホームランと盗塁の記録です。50-50に向けてさらに期待が膨らみます。50-50の数字を見た時、「30と30」を思い出して健康作りにも目を向けていただければ幸いです。