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院長ブログ

老化細胞除去―さまざまな方法

 老化を遅らせることや、老化に伴う疾患を予防することを目的に老化細胞を除去することが活発に研究されています。つい最近、キンミズヒキという多年草から得られた物質で老化細胞を除去する可能性が報告されました(Shimizuら 2025,)。この報告で有効性が示唆されたのは男性のグループのみであったことをはじめ、今後の課題も多いと思われますが老化細胞を除去するサプリメントにつながるのではないかと注目されています。

 老化細胞を除去することはセノリシス(senolysis)と呼ばれています。セノリシスの方法には薬剤を用いる方法、ワクチンを用いる方法、そして細胞を用いる方法が検討されています。 

 セノリシスを起こす薬剤はセノリティックス(senolytics)と呼ばれ、抗がん剤の一種や天然成分を用いた臨床研究が行われています。また、糖尿病薬など既存の薬剤の中にもセノリティックスの面を持つものが見いだされています。

 老化細胞とそうでない細胞の代謝の差を利用するセノリティックスもあります。その例が2年前(2023年5月2日)の当ブログで紹介したアミノ酸代謝を利用するセノリティックスです。その背景に老化細胞が細胞内酸化に弱いことがあります。

 一方、ワクチンや細胞を用いる方法は老化細胞の表面に現れる「目印」を利用するものです。この「目印」は老化細胞特異的抗原(セノアンチゲン、seno-antigen)と呼ばれます。セノアンチゲンに対するワクチン療法の研究は日本のグループが世界をリードしているようです。

 細胞を用いて老化細胞を除去するためにセノアンチゲンを持つ細胞を狙って攻撃するリンパ球を特殊な方法で作成することも研究されています。一方、もともと身体にあるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)もセノアンチゲンの一部を認識することが知られており、体外で増殖・活性化した自分のNK細胞を点滴することによって老化細胞が減少したという報告もあります( Chelyapovら2022)。 老化細胞除去については様々な取り組みが進行中であり、今後の展開が楽しみです。その一方で有用性の判定方法や長期の安全性などについて慎重な検討が望まれます。