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遠くて近い尿酸と果糖
尿酸はプリン体から作られ、血中濃度が高くなると痛風の原因になります。一方、果糖は代表的な糖質の一つです。果糖はその名の通り果物に多い糖で、ブドウ糖と同じく、6つの炭素が骨格となっている六炭糖です。ブドウ糖と果糖がひとつずつ結合したものがショ糖であり、「砂糖」です。「尿酸とプリン体」や「ブドウ糖と果糖」については以前の本ブログで触れていますのでそちらもご参照下さい(2023年7月31日と2023年5月18日)。尿酸と果糖は全く別系統の物質であり、「遠い」関係にあると言えますが、実は代謝の面では接点があり、「近い」関係にもあります。果糖を摂りすぎると尿酸が多く作られる可能性があるのです。
消化管から吸収されて肝臓の細胞に入った果糖の代謝はリン酸化という「加工」から始まります。その後エネルギー源として燃やされるか、エネルギーの蓄えである中性脂肪の原料になります。ブドウ糖からのエネルギーが十分にある場合、果糖は燃やされるよりも中性脂肪の合成へと向かいます。このため果糖が過剰であると中性脂肪が増えやすくなり、脂肪肝の原因にもなります。
肝臓で代謝される果糖が多いと最初のリン酸化に多くのリン酸が消費されます。するとプリン体から尿酸が生成される経路のブレーキが解除され、尿酸生成が促進されます。このため過剰な果糖摂取は脂肪肝のみならず高尿酸血症や痛風にもつながりうるのです。2000種類以上の酵素が働く「化学工場」です。その工場内の2つのライン(果糖の代謝と尿酸の生成)が特定の部品のやり取りによって影響しあっているかのようです。
ただし、ここで大事なことがあります。それは肝臓に入っていく果糖には「関所」があることです。関所は小腸にあります。果糖として摂取された果糖やショ糖が分解してできた果糖は小腸から吸収されます。この吸収された果糖が小腸の壁でブドウ糖と有機酸に転換されることが比較的最近(2018年)報告されています。つまり「関所」の処理能力以内の果糖であればそのまま肝臓に入る果糖は少ないことになります。一方、この「関所」の処理能力には限界があり、それを超えた果糖は門脈を通って肝臓に達します。そこでリン酸化から始まる代謝がスタートし、尿酸生成を促すことにつながります。果糖は摂りすぎに注意です。
果糖はその名のとおり果物に多い糖ですが、多くの加工食品や飲料に用いられている果糖ブドウ糖液糖にも含まれていますので気を付けてみましょう。